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はじめに
特定技能外国人を雇用する中で、雇用の前提となる条件に変更が生じたら、14日以内に出入国在留管理局に届出が必要となります。
どのような事由が生じたら届出が必要になるのかは、「特定技能所属機関は、どういうときに届出が必要になるのですか?(随時届出)」で概要を説明しましたとおり、
ア 就業場所や労働時間などの雇用条件を変更したとき
イ 契約期間の最終日が到来する前に雇用契約を終了したとき
ウ 特定技能外国人本人や所属機関の都合により特定技能外国人の雇用ができなくなったとき
エ 雇用契約終了により新たに雇用契約を締結したとき
オ 所属機関に出入国管理又は労働関係法令違反等があったとき
カ 支援体制に変更があるとき
が対象となります。
このうち、アの雇用条件の変更については、2つに分けて説明しました(「こちら」と「こちら」をご覧ください)。
イとウの特定技能雇用契約で定められた期間を終了または期限の到来を待たずに雇用関係を終了する場合については、「こちら」をご覧ください。
エの雇用契約の終了により新たに雇用契約を締結したときについては、「こちら」をご覧ください。
今回は、オの所属機関に出入国管理又は労働関係法令違反等があったときの説明です。
前回は、この所属機関となりうる基準について説明しました。その中でも随時届出が必要としているのは、以下のような不正、著しい不当な行為の発生したときとしています。
不正、著しい不当な行為の類型
所属機関において、特定技能雇用契約締結した日から遡ること5年以内に、さらに締結後は雇用している限り、不正行為、著しい不当な行為を起こしてはなりません。
そのためには、日常より事業所の全員がそれぞれの文化、習慣などの違いを理解・尊重し、お互いに助け合うような意識の醸成や職場風土を形成するなどにより、深刻な労働者不足の現状を補ってくれる特定技能外国人を見守り、必要に応じて支援する組織体制を築くことが求められます。
主な不正行為、著しく不当な行為は、以下のとおりです。
発生したときや事実を確認したときは、偶発的な発生であっても、必要な対応、改善等を行うとともに、14日以内に届け出る必要があります。
外国人に対して暴行し、脅迫し又は監禁する行為
このような行為は悪質であり、それ自体が刑法犯の恐れがあります。このようなことが発生しないように事業者自ら先頭に立って防止策を推し進めることが求められます。
なお、届出は、実際に刑事罰に処せられなくても、事実の発生だけでも必要になります。
外国人の旅券又は在留カードを取り上げる行為
取り上げる行為には、外国人の意に反して事業者側が保管することです。たとえ失踪防止を理由としても、このような外国人の行動の自由を妨げること自体、人権侵害となるものです。
外国人に支給する手当又は報酬の一部又は全部の不払い
外国人に限らず、給料等は、毎月1回以上、一定の期日ごとに全額(法令で認められた控除を除く。)を通貨で直接本人に支払うことが定められています。
また、賃金(賃金から一部の賃金(割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)を除いたもの)に関しては、産業や職種に関係なく、事業所で働くすべての労働者と事業主に適用される最低賃金制度があり、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
事業主による賃金未払いは罰金刑や立ち入り調査、労基署の行政指導でも支払われないときは、送検の場合もあります。
賃金等は、人間らしく健康で文化的な生活を送るに必要な不可欠なものでありますが、残念ながら、最近、特定技能の事業所ではありませんが、外国人労働者に対する賃金、残業手当などの不払いなどで事業主が逮捕されるニュースが増えている気がします。
外国人の外出その他私生活の自由を不当に制限する行為
特定技能外国人の支援計画には、日常の私生活での支援も対象としますが、例えば、以前の新型コロナ感染防止策としての行動制限などの正当な理由がないにもかかわらず、外国人の外出や外部との通信等を制限(たとえば建物の外部から施錠する、携帯電話類を取り上げるなど)することは許されません。一歩間違えれば監禁罪の恐れもあります。
その他、外国人の人権を著しく侵害する行為
人権とは、人が生まれながらにして持っている、人間らしく生きられる権利をいいます。すべての人が等しく扱いを受ける「平等権」、自由に考え選択する権利「自由権」、人間らしい豊かな生活を送る権利「社会権」などがあります。
そして、今や世界中の人々が協力して地球上の問題を解決するための目標である「持続可能な開発目的(SDGs)」を活動目標とする企業が増えています。
これには、2030年までに達成の17の目標があり、人権とのかかわりでは、「貧困」、「健康と福祉」、「質の高い教育」、「ジェンダー平等」、「働きがい・経済成長」、「人・国の(不)平等」、「平和・公正」があげられます。このような時代の流れに正面から向かっていくことが求められます。
特に、日本において、言語、宗教、文化、習慣等の違いから、外国人というだけで偏見や就労、日常の生活場面で差別を受けるという、時代背景に根をもつであろう現実が否定できません。
こうしたなか、理由が何であろうと、意に反して預貯金通帳を取り上げる行為、意に反して帰国させる行為などは、人権侵害の例とされます。
虚偽・変造された文書、図画の行使又は提供
①外国人の出入国や労働に関連する法律に基づき申請などを行った際に、これまでに不正あるいは著しい不当な行為の事実があったことを隠蔽するため、偽造、変造された文書を行使、提出したとき。
②事業活動に関して、外国人に不正に在留資格認定証明書の交付、上陸許可の証印、在留資格変更許可等を受けさせるため、偽造、変造された文書を行使、提出したとき。
例として、在留資格認定証明書交付申請にあたり、欠格事由となる行為があるにもかかわらず、「無」と記載して申請する場合などがあります。
保証金、違約金、補償金、財産の管理などの締結
業務に関連しての所属機関と特定技能外国人との関係において
特定技能雇用契約による事業活動に関連して、保証金を徴収したり、外国人の財産を管理したり、雇用契約の不履行についての違約金を定めたりするなど、不当な金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結してはいけません。
業務、業務外で、当該外国人、配偶者、密接な関係者等との関係において
特定技能外国人、配偶者、直系、同居親族、外国人と社会生活において密接な関係を有する者との間で、特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をする者若しくは当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結した者又はこれらの行為をしようとする者からの紹介を受けて、当該外国人と当該特定技能雇用契約を締結してはいけません。
所属機関としての届出の不作為
特定技能所属機関に義務づけられている、これまでに説明してきた定期、随時届出事項である、特定技能雇用契約の変更、契約の終了、新たな契約の締結、支援計画の変更、登録支援機関に計画の全部委託契約、変更終了などの届出をしない、届出はしたものの内容が虚偽であるときなどをいいます。
出入国在留管理庁長官による帳簿類の提出等に応じない等の行為
出入国在留管理長官が、所属機関に対し、特定技能雇用契約の報酬等雇用関係事項、契約満了の外国人の出国確保の措置等必要事項についての基準に適合ているか、雇用契約、支援計画を適正に履行しているかどうか等を、報告、帳簿の提出・提示、出頭、質問、関係場所への立ち入り、検査を実施した場合に、
所属機関が、報告、帳簿書類の提出・提示をしない、虚偽の報告をする、虚偽の帳簿書類を提出・提示する、質問に答弁しない、虚偽の答弁をする、検査を拒否、妨害、忌避するなどをいいます。
改善命令等の処分に違反する行為
前述の出入国在留管理庁長官の措置により基準を確保されていないと認められたときに、期限を定めて改善命令を受けることがありますが、これに従わないときをいいます。
その他の行為
その他の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為については、次回に説明します。
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